Avoiding stupidity

避けるべき株。これを明確にしないといけない。激動のリアルワールドを生き抜くために。

チャーリー・マンガーは「自分がどこで死ぬかだけ知りたい。そうすればそこに行かないようにする」といった趣旨のことを述べたことがある。それが投資の要諦だなのだった。

避けるべき株というのは、絶望をもたらす会社だ。それは過大な年次計画を掲げ、多くの投資家を呼び込む。投資家は「この成長率(とはいっても短信の1ページめの一番下あたりに掲載されている会社の計画、会社の希望的観測にすぎない)で、PER20って安いんじゃね?」と思いながら「買い」ボタンを押下する。しかし四半期決算の進捗的に通気達成は微妙ななか、株価が毎日一貫してマイルドに下がり続ける。会社は沈黙を守りつづけ、その沈黙故に、含み損を抱える投資家に(とはいえ、最終的には計画どおり着地するよね、するよねきっとお願いだから!)というような虚ろな希望を抱かせる。そして、3Q決算あたりで下方修正を出す。理由はたとえばコロナであったり気候であったり、よりよい製品にするために開発が次期にずれる、であったり色々だが、まあ約束を反故にした。そして当然の帰結として株価は止めの一撃としてストップ安、次の日も続落。

そのような株は絶望の株だといえる。絶望というのは希望の裏返しだ。多くの希望を集めて高くなった株価を正当化できる会社は少ない。人気のある銘柄は絶望と紙一重なのだ。投資家は絶望と無縁の株を保有するべきだし、常に探し続けるべきだ。もちろん、絶望の株というのを持ってしまうことはある。買ったあとに気づく。しかし含み損が大きくて、損失確定を躊躇する。しかし激動の市場では、その企業の内在価値と株価の乖離を目ざとく見つけ、株価が高ければ売られる。だから含み損であろうと、その企業の価値が株価に比べて過大評価されていると了解したのなら、その瞬間に売るべき。そうでないと損失は広がるばかり。それをしないのは、弱さと怠慢以外の何物でもない。

考えてみてほしい。ここからは心理的な問題になるんだが。君の含み損銘柄を損切りして、その後より期待値の高い銘柄を保有する。そしてその銘柄で損するか儲けるか、損もしないし儲けもしない。一方、惰性で弱い銘柄を持ち続けていれば、起こることといえばさらなる下落。その株はあがりません。なぜなら下がってるでしょう。「そのうち上がるでしょ」と思いながら見ている月日は無駄だし、精神的にもよくない。なによりも、損した銘柄で損を取り返さないといけないというルールはない。損した銘柄に遭遇するのは避けられないし、そのまま持っていて買値付近まで戻ったらやれやれ売りをしようと思っている。そんな行動に対して、貴殿は含み損の銘柄以外によりよい銘柄は見つけられないんですか、と問いたい。含み損銘柄を持ち続けているというのは、その銘柄が今市場にある銘柄のなかで最高の銘柄だということになる。そういうことなら持ち続ければいいし、そう思っていないのなら売るべきだ。

したがって、投資家は常に補欠メンバー(ある銘柄を売ったらすぐに買う銘柄候補)を探し続けることが必要であり、それは好奇心がなければできない。好奇心は最大のリスク回避だ。その努力をしないでいると、含み損の銘柄に希望を持ち続け、裏切られる。ゼロベースで仕切り直すということは不可欠だろう。失敗が避けられない、しかも半々の割合で失敗するという激動のリアルワールドにおける重要なマインドセットだ。

絶望の会社というところに戻ると、悪い会社には前兆のようなものがある。たとえばIR資料でグラフに縦軸がなくて、実際の数字がわからない、とか、これが知りたいのにという情報がない、とか、資料自体、決算発表と同時に出さないとか、前回の決算では出していたKPIの一つを今回は業績が悪いからか掲示しないとか。そういうところをよく読まなければいけない。

いや、結局投資は難しい。いくら首相が変わったことで株式市場が変調しても岸田のせいにすることもできない。投資家は他責思考ではいけない。だれかのせいにしてはいけない。

その企業は社会的課題を解決し、永続的に利益をだし、成長できるかをシンプルに、ゼロベースに考えて長期スパンで投資する。これがStupidityを避ける方法なのかもしれない。